井岡一翔がタトゥーを入れた理由、日本の考えに疑問も
昨年大みそか「WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ」で田中恒成に勝利し2度目の王座防衛に成功した井岡一翔(31=Ambition)だが、井岡が左腕のタトゥーが見えた状態で戦ったことが問題化している。試合当日の記者席でも「井岡の刺青は大丈夫なのか」との話題が上がっていた。
それはJBC(日本ボクシングコミッション)の第86条(欠格事由)「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」として、試合に出場することができないという決まりがあるからだ。試合前にファンデーションなどで隠す措置をしたようだが目立ちすぎた。
ところで井岡はなぜ刺青を入れたのか。今年8月に配信された自身のYouTubeを見てみると「復帰のきっかけ、本気でやる、これをしたら逃げられないという決意表明と、入れても後悔しないという思いで入れた。日本の世界王者で入れてる人はいないと思うが世界では入れている。(タトゥーで)就職できなかったり、表舞台に立てないというのは日本と世界のギャップがある」と一念発起の覚悟でタトゥーを入れたと語った。
そして「海外の選手が日本のジムに所属して日本で戦うのは可能なのに、日本人ではダメなのも一貫性がない」「人はパフォーマンスを見に来ている。和彫、洋彫などタトゥの細かいことはどうでもいいこと」と持論を展開している。
井岡の復帰とはいつか。井岡は17年11月に5度防衛したWBA世界ライト級のベルトを返上、同年大みそかに引退を表明したが、18年7月に復帰を発表し、海外で2度試合を行った。このときはまだタトゥーは確認できないが、翌19年6月の日本での復帰戦前の公開練習時から左腕のタトゥーが確認でき、話題となっていた。
◾️井岡の言うタトゥーに対する日本と世界のギャップの実際
タトゥーを入れた海外ボクサーをよく目にする、アメリカ、イギリスなどボクシングの代表的な国でもタトゥーの規制はない。世界3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)は左半身に大きく入れている。海外ではボクシングをやる上では問題はないのが実際だ。しかしタトゥーにオープンな国、規制のある国は存在する。
まずタトゥーにオープンな国はロシアだ。ロマチェンコの母国ウクライナもかつてはロシア領だった。
20世紀初頭、ロシア皇帝ニコライ2世が来日し、肩に龍の和彫りを入れたことからロシアでは芸術としてタトゥーが広まりを見せた。フランスやイタリアでもタトゥーはファッションとして受け入れられ、スポーツや就職などの規制はない。
アジア圏ではタイは宗教的な意味や魔除けなどでタトゥーが用いられてきて生活と溶け込んでいるが、日本、中国、韓国は反社会的なイメージが強く、共通点には古くからタトゥーは罪人に施すものという認識がある。そして警察官・自衛官・軍隊・公務員に採用されないのが実情だ。また日本だけでなく、海外の一部の国にも「タトゥー=ギャング」の認識の国も残る。
こうやって歴史的に誰にどう使われてきたかによってタトゥーの認識が異なるが、ポップカルチャーとしてタトゥーが広まったアメリカ、イギリスなどの国でも近年、服などで隠れていないと警察に採用されないなどの規制がある。上流階級ではタトゥーは少数派とも。
ファッションとして世界的に広がりを見せるタトゥーだがブームだと流行り廃りもあるだろう。国の考え方も良くも悪くも変わる。一度入れたら消せないタトゥー、慎重を期すべきだろう。